歯ブラシの交換を怠り、毛先が開いたり、汚れたりした歯ブラシを使い続けること。それは、単に歯磨きの効果が低下するだけでなく、様々なお口のトラブルを引き起こすリスクをはらんでいます。まるで、切れ味の悪い包丁で食材を切ろうとするようなもので、どんなに頑張っても良い結果は得られず、むしろ危険すら伴うのです。まず、毛先が開いた歯ブラシでは、歯の表面や歯と歯の間に潜むプラーク(細菌の塊)を効率的に除去することができません。プラークは、虫歯や歯周病の最大の原因です。磨き残しが多くなればなるほど、これらの病気にかかるリスクは高まります。特に、歯周ポケットや奥歯の裏側など、もともと磨きにくい場所は、劣化した歯ブラシではさらに清掃が不十分になり、歯周病が進行したり、気づかないうちに虫歯が大きくなったりする可能性があります。さらに、古い歯ブラシは衛生面でも大きな問題を抱えています。歯ブラシは、毎日お口の中という細菌が多く存在する環境で使用され、湿った状態で保管されることが多いため、細菌が繁殖しやすい場所と言えます。長期間交換せずに使用していると、歯ブラシの毛やヘッド部分に、黄色ブドウ球菌や大腸菌、緑膿菌といった様々な細菌が付着・増殖している可能性があります。これらの細菌が、歯磨きのたびにお口の中に再侵入し、口内炎や歯肉炎といった炎症を引き起こしたり、既存の歯周病を悪化させたりする原因となることも考えられます。また、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかった後に同じ歯ブラシを使い続けると、歯ブラシに付着したウイルスや細菌によって再感染するリスクも指摘されています。劣化した歯ブラシを使い続けることは、歯茎を傷つける原因にもなり得ます。毛先が開いて不揃いになったり、毛の弾力が失われたりすると、歯茎に過度な刺激を与えてしまい、歯茎下がりや知覚過敏を引き起こす可能性があります。特に、力を入れてゴシゴシ磨く癖のある人は、毛先の開いた歯ブラシで歯茎を傷つけやすく、出血や炎症を招きやすくなります。このように、歯ブラシの交換を怠ることは、百害あって一利なしと言っても過言ではありません。