印象が良い歯医者の言い回し

デンタルフロスは、口腔ケアにおける重要なアイテムとして多くの歯科医が推奨していますが、その一方で、一般の方々の間にはいくつかの誤解や間違った認識が存在するのも事実です。これらの誤解が、デンタルフロスの適切な使用を妨げたり、効果を半減させたり、あるいは使用をためらわせる原因になっていることもあります。ここでは、デンタルフロスに関するよくある誤解をいくつか取り上げ、歯科医が伝えるべき真実について解説します。まず、「デンタルフロスを使うと歯間が広がってしまうのではないか」という誤解です。これは非常によく聞かれる心配事ですが、結論から言うと、適切に使用している限り、健康な歯や歯茎であればデンタルフロスによって歯間が広がることはありません。歯は骨にしっかりと支えられており、フロスの細い繊維が通る程度で動揺したり、隙間が広がったりするものではないのです。むしろ、フロスを使わないことで歯間にプラークが蓄積し、歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けて歯が動きやすくなったり、歯茎が下がって歯間が目立つようになったりすることの方が問題です。歯科医は、フロスが歯間を広げるのではなく、歯周病予防に役立つことを強調します。次に、「フロスを使うと歯茎から血が出るから、使わない方が良い」という誤解です。初めてフロスを使った時や、久しぶりに使った時に歯茎から出血することがありますが、これは多くの場合、歯茎に炎症が起きているサインです。つまり、プラークが原因で歯肉炎になっている可能性が高いのです。出血を恐れてフロスの使用を止めてしまうと、炎症の原因であるプラークが除去されず、症状はさらに悪化する可能性があります。歯科医は、初期の歯肉炎であれば、むしろ正しい方法で丁寧にフロスを使い続けることで、数日から1週間程度で炎症が改善し、出血しなくなることが多いと説明します。ただし、あまりにも出血が続く場合や、痛みが強い場合は、他の原因や進行した歯周病の可能性もあるため、速やかに歯科医に相談することが重要です。また、「歯ブラシでしっかり磨いているからフロスは必要ない」というのも大きな誤解です。前述の通り、歯ブラシだけでは歯全体の約6割程度しか清掃できず、歯間や歯周ポケットには多くのプラークが残ってしまいます。