歯の神経を抜く治療、いわゆる抜髄(ばつずい)は、激しい虫歯の痛みから解放されるための有効な手段ですが、神経を失った歯にはいくつかの変化が起こり、その後のケアが非常に重要になります。神経を抜いた歯は、一体どのようになるのでしょうか。まず最も大きな変化は、歯が「生きている組織」から「死んだ組織」になるということです。歯の神経(歯髄)は、歯に栄養や水分を供給し、温度や圧力などの刺激を感じ取る役割を担っています。この歯髄がなくなると、歯は栄養供給を断たれ、徐々に乾燥してもろくなっていく傾向があります。健康な歯に比べて弾力性が失われるため、硬いものを噛んだ時などに割れたり、欠けたりするリスクが高まるのです。このため、神経を抜いた歯、特に奥歯の場合は、歯全体を覆う被せ物(クラウン)で保護することが一般的です。次に、感覚の変化も挙げられます。神経を抜いた歯は、冷たいものや熱いものに対する感覚がなくなります。これは、痛みの原因となっていた刺激を感じなくなるというメリットでもありますが、同時に虫歯が再発しても気づきにくいというデメリットにも繋がります。神経がある歯であれば、虫歯が進行するとしみたり痛んだりといったサインが出ますが、神経のない歯では、かなり進行して歯の根の先に膿が溜まったり、歯がグラグラしたりするまで自覚症状が出ないこともあります。そのため、定期的な歯科検診でレントゲン写真を撮るなどして、問題がないかを確認することがより一層重要になります。また、神経を抜いた歯は、時間の経過とともに徐々に色が黒ずんだり、黄ばんだりする「変色」を起こすことがあります。これは、歯の内部に残った血液成分や組織液が変性したり、根管充填材の色が透けて見えたりすることが原因とされています。特に前歯の場合、見た目が気になるようであれば、ホワイトニングやセラミックの被せ物などで対応することも可能です。さらに、神経を抜いた歯は、適切な根管治療が行われていれば長持ちする可能性が高いですが、根管内に細菌が残っていたり、治療後に新たに細菌が侵入したりすると、歯の根の先で炎症(根尖性歯周炎)を起こし、痛みや腫れ、膿が出るなどの症状が現れることがあります。この場合は、再度根管治療(再根管治療)が必要になることもあります。
神経抜いた歯のその後は?知っておくべき変化