歯医者さんで治療を受ける際、痛みを和らげるために使われる局所麻酔。治療中は頼りになる存在ですが、治療後いつまで効果が続くのか、気になる方も多いでしょう。麻酔が効いている時間は、日常生活にも影響するため、おおよその目安を知っておくと安心です。一般的に、歯科治療で最もよく用いられる「浸潤麻酔(しんじゅんますい)」の場合、麻酔の効果が完全に切れるまでの時間は、およそ1時間から3時間程度と言われています。これは、麻酔薬が注射された部位から徐々に吸収・分解され、効果が薄れていくのにかかる時間です。虫歯の治療や簡単な抜歯など、多くの処置でこの程度の持続時間を目安に考えておくと良いでしょう。しかし、これはあくまで平均的な目安であり、麻酔の効果時間にはいくつかの要因によって個人差が生じます。まず、「麻酔薬の種類と量」が影響します。歯科では、作用時間の異なる数種類の麻酔薬が使われており、治療内容や患者さんの状態に応じて使い分けられています。例えば、作用時間の短いリドカインという麻酔薬がよく使われますが、より広範囲に長時間効果を持続させたい場合や、外科的な処置を行う際には、作用時間の長いアルチカインやメピバカインといった麻酔薬が選択されることもあります。当然、使用する麻酔薬の量が多いほど、効果が持続する時間は長くなる傾向があります。また、「麻酔の方法」によっても効果時間は大きく異なります。下顎の奥歯の治療などで用いられる「下顎孔伝達麻酔(かがくこうでんたつますい)」は、太い神経の束の近くに麻酔薬を作用させるため、効果範囲が広く、持続時間も長くなります。この場合、唇や舌の半分まで麻痺することがあり、完全に効果が切れるまでに3時間から6時間程度、場合によってはそれ以上かかることもあります。浸潤麻酔に比べて、日常生活への影響も大きくなるため、注意が必要です。さらに、「患者さん個人の体質や状態」も麻酔の持続時間に影響を与える重要な要素です。年齢、体重、代謝の速さ、その日の体調、肝臓や腎臓の機能などによって、麻酔薬が体内で分解・排泄されるスピードが異なります。一般的に、若い方や代謝の良い方は麻酔が早く切れる傾向があり、高齢の方や肝機能・腎機能が低下している方は、麻酔が長引きやすいと言われています。