コンポジットレジンは優れた歯科材料ですが、残念ながら永久に使用できるものではありません。いつかは劣化し、再治療が必要になる時が来ます。この「寿命」が尽きたコンポジットレジンを放置していると、そこから二次虫歯が発生しやすくなるため、適切なタイミングでの再治療が重要です。コンポジットレジンの平均的な寿命は、様々な報告がありますが、一般的にはおよそ5年から10年程度と言われています。ただし、これはあくまで目安であり、患者さんの口腔内の状態、噛み合わせの力、食生活、セルフケアの質、そして治療を行った歯科医師の技術など、多くの要因によって大きく変動します。コンポジットレジンが寿命を迎えるサインとしては、まず「変色・着色」が挙げられます。長期間の使用により、コーヒーやカレーなどの色素が沈着したり、レジン自体が黄色っぽく変色したりすることがあります。これは審美的な問題だけでなく、レジンの表面性状が変化し、プラークが付着しやすくなっている可能性も示唆します。次に、「摩耗」です。毎日の食事や歯磨き、歯ぎしりなどによって、レジンは少しずつすり減っていきます。摩耗が進むと、歯との間に段差ができたり、噛み合わせの高さが変わってしまったりすることがあります。この段差はプラークの温床となり、二次虫歯のリスクを高めます。また、「辺縁からの漏洩(マイクロリーケージ)」も寿命のサインです。歯とレジンの間に微細な隙間ができ、そこから唾液や細菌が侵入する状態です。初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると冷たいものがしみたり、二次虫歯が発生したりします。「破折・脱離」は、より明確な寿命のサインと言えるでしょう。レジンの一部が欠けたり、全体が取れてしまったりした場合は、速やかな再治療が必要です。これらの劣化のサインを見逃さず、適切な時期に再治療を行うことが、二次虫歯の発生を防ぎ、歯の健康を守るために非常に大切です。そのためには、自覚症状がなくても定期的に歯科検診を受け、歯科医師や歯科衛生士にレジンの状態をチェックしてもらうことが不可欠です。もし、レジンの縁に色がついてきた、段差を感じる、しみるなどの症状があれば、早めに相談しましょう。再治療の際は、古いレジンを丁寧に除去し、再度精密な充填を行うことで、再び健康な状態を取り戻すことができます。
コンポジットレジン寿命と再治療