歯と歯の間にできる虫歯は、初期には自覚症状が乏しいため、ついつい放置してしまいがちです。しかし、この「見えない虫歯」を甘く見てはいけません。放置することで、お口の中だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性のある深刻な事態を招くことがあるのです。まず、歯間虫歯が進行すると、虫歯の穴は徐々に大きくなり、深くなっていきます。象牙質に達すると冷たいものがしみ始め、さらに進行して歯の神経である歯髄にまで達すると、ズキズキとした激しい痛みに襲われるようになります。こうなると、夜も眠れないほどの痛みに悩まされたり、食事もままならなくなったりすることもあります。神経まで達した虫歯の治療は、根管治療という複雑で時間のかかる処置が必要になり、治療の成功率も100%ではありません。最悪の場合、歯を残すことができず、抜歯に至るケースも少なくありません。歯を失うことの影響は、単に食べ物が噛みにくくなるだけではありません。隣の歯が倒れ込んできたり、噛み合う相手の歯が伸びてきたりして、歯並びやかみ合わせ全体が悪化する原因となります。これにより、さらに他の歯が虫歯や歯周病になりやすくなったり、顎関節症を引き起こしたりするリスクも高まります。また、虫歯を放置することで、細菌が歯の根の先から顎の骨へと感染を広げることがあります。これを根尖性歯周炎と呼び、歯茎が腫れたり、膿が出たり、強い痛みを伴ったりします。さらに重症化すると、顔が腫れ上がる蜂窩織炎(ほうかしきえん)や、細菌が血液中に入り込んで全身に広がる菌血症、さらには敗血症といった命に関わる状態を引き起こす可能性もゼロではありません。特に糖尿病などの持病がある方や、免疫力が低下している方は、感染が広がりやすく重症化しやすいため、一層の注意が必要です。歯間虫歯の放置は、治療費の増大にも繋がります。初期の小さな虫歯であれば、簡単な詰め物で治療が済むことが多いですが、進行して神経の治療が必要になったり、被せ物やブリッジ、インプラントといった大掛かりな治療が必要になったりすると、治療期間も長くなり、費用も高額になります。経済的な負担だけでなく、時間的な負担、精神的な負担も大きくなることは避けられません。