お子さんが歯の治療で麻酔を使った場合、大人以上に注意深い観察とケアが必要です。子どもは、大人に比べて麻酔に対する反応が異なったり、麻酔が効いている間の行動をコントロールするのが難しかったりするため、思わぬトラブルにつながることがあります。まず、子どもの場合、一般的に大人よりも麻酔薬の代謝が早く、麻酔が切れるまでの時間も短い傾向があります。しかし、それでも1時間から2時間程度は麻酔の効果が持続することが多いでしょう。この間、お子さんは唇や頬、舌の感覚が麻痺しているため、その奇妙な感覚が気になって、無意識のうちに指で触ったり、噛んだり、吸ったりしてしまうことがあります。特に、麻痺した部分を強く噛んでしまう「咬傷(こうしょう)」は、最も注意すべきトラブルの一つです。咬傷によってできた傷は、口内炎になったり、腫れたり、出血したりすることがあり、ひどい場合には食事もままならなくなることがあります。これを防ぐためには、麻酔が完全に切れるまで、保護者の方がお子さんから目を離さず、唇や頬を噛まないように注意を促し続けることが非常に重要です。麻酔が効いている間は、食事やおやつを控えるのが最も安全です。もし、どうしても何かを食べさせる必要がある場合は、柔らかく、噛みやすいもの(ヨーグルト、ゼリー、おかゆなど)を少量だけ与え、麻酔が効いていない側でゆっくりと噛むように指導しましょう。熱い飲み物も、感覚が鈍いために火傷のリスクがあるので避けてください。また、治療後にお子さんが唇や頬を気にして頻繁に触っているようなら、「そこはバイキンさんが寝ているから、起こさないようにそっとしておこうね」などと、お子さんにも分かりやすい言葉で説明し、優しく注意を促すと良いでしょう。麻酔が切れてくると、ジンジンとした違和感や軽い痛みを感じることがあります。お子さんが不快感を訴える場合は、歯科医師から処方された鎮痛剤があれば、指示通りに服用させてください。もし、麻酔が切れた後に、唇や頬が大きく腫れていたり、出血が止まらなかったり、強い痛みを訴えたりする場合は、咬傷を起こしている可能性が高いので、速やかに治療を受けた歯科医院に連絡し、指示を仰ぎましょう。歯科医院では、傷の状態を確認し、必要に応じて消毒や軟膏の塗布などの処置を行ってくれます。
子どもの歯の麻酔、切れるまでの注意深い観察