転倒や衝突などの事故によって歯に強い衝撃を受けると、歯がぐらぐらしてしまうことがあります。このような外傷性の歯の動揺の場合、すぐに抜歯と判断されるわけではありません。むしろ、可能な限り歯を保存するための治療が試みられます。事故で歯がぐらぐらした場合の対処法と、抜歯に至るケースについて解説します。まず、事故で歯を打ったり、歯がぐらついたりした場合は、できるだけ早く歯科医院を受診することが非常に重要です。時間が経つほど、歯の保存の可能性が低下することがあります。歯科医院では、まず問診で事故の状況(いつ、どこで、どのようにぶつけたかなど)を詳しく聞き取ります。そして、視診で歯の動揺度、歯の位置の変化(めり込んだり、飛び出したりしていないか)、歯肉の損傷、歯の破折の有無などを確認します。さらに、レントゲン撮影を行い、歯根が折れていないか(歯根破折)、歯を支える歯槽骨に骨折がないかなどを詳細に調べます。これらの診査結果に基づいて、治療方針が決定されます。歯の動揺だけで、歯根破折や大きな位置のずれがない場合は、多くの場合「固定」という処置が行われます。これは、ぐらぐらしている歯を隣の健康な歯に接着剤やワイヤーなどで一時的に固定し、安静を保つことで、歯の周囲の組織(歯根膜など)の回復を待つ治療法です。固定期間は、歯の状態によって異なりますが、数週間から数ヶ月程度が一般的です。この間、硬いものを噛まないように注意し、口腔内を清潔に保つことが重要です。多くの場合、この固定によって歯の動揺は徐々に収まり、再び安定していきます。しかし、残念ながら抜歯に至るケースもあります。例えば、歯根が歯茎に近い部分で横方向に折れてしまっている場合や、歯根が縦に割れてしまっている場合、あるいは歯が完全に抜け落ちてしまい(完全脱臼)、再植が困難な場合などです。また、歯の神経が死んでしまい(歯髄壊死)、根の先に大きな感染巣ができてしまった場合や、固定しても動揺が改善せず、予後不良と判断された場合も、抜歯が選択されることがあります。いずれにしても、自己判断は禁物です。事故で歯がぐらついたら、速やかに歯科医師の診断を受け、適切な指示に従うことが、歯を守るために最も大切なことです。
事故でぐらぐらした歯を抜くべきか