リップクリームをこまめに塗り、生活習慣にも気を使っているのに、口唇炎が、一向に治る気配がない。あるいは、一度治っても、すぐに再発してしまう。そんな、しつこい口唇炎の背景には、単なる唇の問題だけでなく、何か、全身の病気が隠れている可能性も、考えられます。口は、体の健康状態を映し出す「鏡」とも言われ、内臓の不調が、口唇炎という形で、サインを送っていることがあるのです。まず、口唇炎との関連が深いのが、「胃腸の不調」です。慢性的な胃炎や、便秘、あるいは、下痢など、胃腸の機能が低下していると、食べ物からの栄養素の吸収が、うまくいかなくなります。特に、皮膚や粘膜の健康に不可欠な、ビタミンB群が不足しがちになり、その結果、粘膜のターンオーバーが乱れ、口唇炎として現れることがあります。また、「クローン病」や「潰瘍性大腸炎」といった、炎症性の腸疾患の、初期症状として、口の中に、アフタ性の口内炎や、口唇炎が、繰り返しできることも知られています。次に、考えられるのが、「血液の病気」です。例えば、「鉄欠乏性貧血」では、血液中のヘモグロビンが不足し、組織に十分な酸素が供給されなくなります。これにより、舌の粘膜が萎縮して、ヒリヒリと痛んだり(舌炎)、口角炎や、口唇炎が起きやすくなったりします。さらに、免疫系の異常によって起こる、全身性の病気が、口唇炎の原因となることもあります。代表的なのが、「ベーチェット病」です。これは、アフタ性の口内炎を、何度も繰り返すのが特徴で、それに加えて、外陰部の潰瘍や、皮膚症状、目の症状などを伴います。また、「シェーグレン症候群」という、唾液腺や涙腺が、自己免疫によって破壊される病気では、強度のドライマウス(口腔乾燥症)が起こります。唾液による、粘膜の保護機能が失われるため、口の中全体が荒れ、口唇炎も、頻繁に起こるようになります。もちろん、これらの病気は、稀なものです。しかし、もし、あなたの口唇炎が、非常に治りにくく、かつ、口の中以外の、何らかの全身症状(腹痛、貧血症状、関節痛、目の乾燥など)を伴う場合は、一度、内科や、リウマチ科などの専門医に相談し、全身的な観点から、原因を調べてもらうことが、重要になるかもしれません。
口唇炎がなかなか治らない。考えられる全身の病気とは