歯の治療で麻酔を使った後、唇や頬、舌が痺れるという感覚は多くの人が経験しますが、それ以外にも様々な違和感を覚えることがあります。これらの感覚は、麻酔薬の種類や量、注射した部位、そして個人の体質によって異なりますが、一時的なものがほとんどです。まず、麻酔が効いている最中や切れ際によく感じられるのが、「腫れぼったい感覚」や「何かがくっついているような感覚」です。実際には腫れていなくても、感覚が麻痺しているために、自分の唇や頬が普段よりも厚みを増したように感じたり、何か異物が付着しているように感じたりすることがあります。これは、触覚や圧覚が鈍くなっているために起こる錯覚のようなものです。また、麻酔が効いている範囲の「温度感覚の鈍麻」もよく見られます。冷たい水で口をゆすいでも冷たさを感じにくかったり、逆に熱いものを口に含んでも熱さを感じにくかったりします。このため、麻酔が切れるまでは、熱い飲み物や食べ物による火傷に注意が必要です。味覚についても、一時的に変化を感じることがあります。特に、舌の一部が麻痺している場合、食べ物の味が普段と異なって感じられたり、味が分かりにくくなったりすることがあります。これは、麻酔薬が味覚を伝える神経にも影響を与えるために起こります。唾液の量が増えたように感じたり、逆に口の中が乾燥しているように感じたりすることもあります。麻酔によって自律神経系にも一時的な影響が及ぶためと考えられます。麻酔が切れてくる過程では、痺れていた部分が「ジンジンする」「ピリピリする」といった感覚や、軽い痛みが出てくることがあります。これは、麻痺していた神経の機能が回復してくる兆候であり、多くの場合、時間の経過とともに自然に治まっていきます。稀に、麻酔の注射をした部位に、内出血による青あざ(皮下出血斑)ができたり、口内炎ができたりすることもあります。これらも通常は数日から1週間程度で自然に治癒します。また、ごく稀ですが、麻酔注射の針が筋肉に触れた場合などに、一時的に口が開きにくくなる(開口障害)ことが起こることも報告されています。これらの違和感の多くは、麻酔薬の効果が完全に切れ、数時間から数日以内に消失する一過性のものです。しかし、もし症状が長引いたり、悪化したりするような場合は、自己判断せずに、治療を受けた歯科医院に相談するようにしましょう。