歯医者さんの初診で、受付で渡される「問診票」。名前や住所といった基本情報だけでなく、現在の症状、過去の病歴、アレルギーの有無、服用中の薬、生活習慣、さらには妊娠の可能性まで、様々な項目について記入を求められます。「なぜこんなに詳しく書かなければいけないの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、この問診票に記入された情報は、歯科医師が患者さんの状態を正確に把握し、安全で適切な診断と治療計画を立てるために、非常に重要な役割を果たしているのです。まず、「現在の症状」に関する項目は、診断の最も基本的な手がかりとなります。いつから、どこが、どのように痛むのか、どのような時に症状が悪化するのか、といった情報は、考えられる病気を絞り込み、必要な検査を判断する上で不可欠です。例えば、「冷たいものがしみる」という症状一つとっても、虫歯なのか、知覚過敏なのか、歯周病なのか、あるいは他の原因なのか、様々な可能性が考えられます。詳しい症状の記述は、的確な診断への近道となるのです。次に、「過去の病歴(既往歴)」や「アレルギーの有無」、「服用中の薬」に関する情報は、安全な歯科治療を行う上で極めて重要です。例えば、高血圧や心臓病などの循環器系の疾患がある場合、治療中のストレスや麻酔薬の使用に注意が必要です。糖尿病の方は、傷の治りが遅かったり、感染しやすかったりする傾向があるため、抜歯などの外科処置は慎重に行う必要があります。骨粗しょう症の治療薬(特にビスフォスフォネート製剤)を服用している方は、抜歯後に顎の骨が壊死する「顎骨壊死(がっこつえし)」という重篤な副作用のリスクがあるため、歯科医師は事前にその情報を把握しておく必要があります。また、麻酔薬や抗生物質、金属などに対するアレルギー歴があれば、それらを避けた治療法を選択しなければなりません。お薬手帳を持参し、正確な情報を提供することが、医療事故を防ぎ、安全な治療を受けるために不可欠です。「生活習慣」に関する質問、例えば喫煙や飲酒の習慣、歯ぎしりや食いしばりの有無なども、お口の健康と深く関わっています。喫煙は、歯周病を悪化させる最大の原因の一つであり、傷の治りも遅らせます。
歯医者初診の問診票、なぜ詳しく書く必要が?